T様邸リノベ エピソード④

大工さんは初日の登場の際に「墨出し」をします。
設計図に基づいて、現場の床や壁に墨壺の糸をはじいて、新しく壁が立つ位置やドア位置などの印(スミ)をつけていく作業です。
設計者にとっても重要な場面なので必ず現場に行きます。
大工さんと打ち合わせしながら、お客様の使い勝手の要望や設計の意図を伝えるのです。
この仕事はつくづくコミュニケーションが大切。
わからないことは素直にその旨を伝え、わからないままにしないでお互いの考えをすり合わせておきます。
なんといっても住空間のベースを創るのは大工さん。
T様邸を創ってくれた大工のFさんはT様とおなじ愛猫家なので、壁面に取り付けるキャットステップのこともいっしょに考えてくれました。

ちなみに、電気屋さんや水道屋さんなど、床や壁の中に配管・配線をする職人は、大工さんが壁を塞いでしまうとできなくなってしまいますから、監督が現場の進行を見ながら現場に入る日を指示します。
↓大工さんが立てた間柱の中を電気の線が貫通しています。

築年数の古いマンションの特性のひとつとして、天井や壁、床の不陸(必ずしもまっすぐではない=歪みがある)があります。
既存の壁や床の上に正しい矩(カネ)で軸を組んで、新しい壁や床を内側にもう一重造れば、物理的には歪みや狂いの少ない空間が構築できますが、全体に部屋が狭くなってしまうことは避けられません。
特に床が上がって天井が下がった場合のお部屋の天井高は、けっこう低くなった感じがするものです。
使い勝手に影響が出ない範囲で、最大限に空間を広く活用するのが私たちの基本姿勢です。
そこに職人技が活きてきます。
大工さんは上述の墨出しの際に、レーザーを用いて水平を出し、現状のまっすぐなところ、歪んでいるところを確認していきます。
「ここの壁はまぁまぁ良いな・・・」
「この壁はこっち側に少し傾いてるぞ」
大工さんは現状を踏まえて、最良のつくり方を実践してくれます。

つづく

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